SF特撮テレビドラマの金字塔、『ウルトラマン』。1966年7月17日から9か月にわたり放送されました。
本作の第1話「ウルトラ作戦第一号」では、ウルトラマンとウルトラマンに変身する科学特捜隊、通称科特隊の隊員・ハヤタとのファーストコンタクトが描かれています。
ハヤタは小型ビートルで飛行する赤い球体(=ウルトラマン)と衝突し、命を落としてしまい、ウルトラマンと一心同体になります。
そう、二人の出会いは事故から始まったのです。
今回はこの事故について検証してみました。
前提条件:ウルトラマンとハヤタが事故を起こすまで
この事故ですが、次のような経緯をたどっています。
パトロール中のハヤタが青い光を放つ未確認飛行物体を発見します。この青い光はウルトラマンが護送中に逃亡を図ったベムラーという宇宙怪獣です。
ムラマツキャップからの正体を確かめるようにとの指令を受け、ハヤタは青い球体に接近。
追跡中に青い球体は竜ヶ森の近くの湖に沈みます。
その直後を追いかけていたと思われるハヤタのビートルは湖上空を飛行中に赤い球体と激突、命を落とすのです。
竜ヶ森は群馬県!
さて、まずは事故が起こった現場を調べてみましょう。作中では「竜ヶ森」という地名が登場します。この上空を飛行中にハヤタは赤い球体を発見します。
また、その近くには湖があり、ベムラーはここに隠れました。名称は竜ヶ森湖とされています。
さて、竜ヶ森という地名は東日本から東北にかけて複数存在しますが、どれも近くに湖がなく(あくまでも竜ヶ森の地名をいただくほどの距離)、竜ヶ森湖は存在しません。ここから、架空の地名ということがわかります。
そこで映像を見てみると、興味深い描写があります。
ハヤタから赤い球体に関する連絡が入った場面です。
アラシ隊員が群馬県南東部、埼玉や栃木、茨木との県境付近に印をつけているのです(透明アクリル板地図の裏から撮影されているため、左右が反転していることに注意)。
印をつけるタイミングからして、ハヤタの報告を聞いたアラシが竜ヶ森の位置に印をつけたと考えるのが妥当でしょう。
その付近には、竜ヶ森という地名はありません。
以上のことから、竜ヶ森は群馬県南東部にある架空の土地ということがわかります。
なお、劇中では緊急通報を受けて現場へ急行した埼玉県警の警ら隊から科特隊本部へ連絡が入っていますが、この場面でも上述の位置に印がつけられていることが確認できます。
群馬県警よりも埼玉県警の方が駆け付けやすい場所ということなのでしょうか?
竜ヶ森は地図の位置より群馬県側にあり、周囲の道路が整備されていないのかもしれません。
埼玉から北上したほうが早く確実につけると考えると、応援要請があった可能性も含め、一応地図との整合性も取れなくはない気がするのですが。
問題の事故は正面衝突?
さて、衝突シーンに話を戻しましょう。この時、ハヤタは正面から来る赤い光に気づき、そのまま避ける間もなく激突しています。
ハヤタは驚きながらもきっちり操縦桿を握っていますが、衝突を回避出来ませんでした。
気づいてから衝突まで約3秒だったため、仕方ない面も感じられます。
とはいえ、若干不自然な描写です。
正面衝突のように見えますが、仮に正面から向かって来ていたとすると、赤い光はかなり遠くからでも見えるはずです。
対して映像では急にコックピットが赤く光る様子が見え、赤い光は突然現れたように見えます。
しかし、その前のカットを見ると、この描写に説明がつきます。
それは竜ヶ森湖上空をなめるようにパンアップするカットです。
これをビートルのコックピットから見た映像ととらえると、ビートルは竜ヶ森湖上空で大きく機首を上げ(こうとらえると急激に上げすぎですが)、赤い光を視認できるようになったと考えられます。
さらに衝突シーンでは、赤い光(球体。正体はウルトラマン)は上からビートルに向かって降ってきています。
ウルトラマンは逃亡を図ったベムラーを追っていました。
ベムラー(青い光)が竜ヶ森湖に逃げ込んだのを竜ヶ森のかなり上空で確認したウルトラマンは、赤い球体のまま一直線に竜ヶ森湖に突入しようとしたのではないでしょうか?
事故原因を推察!
さて、以上の飛行経路を両者がとっていたとしても、やはり衝突するのは不自然です。
特にウルトラマン側が回避行動をとらなかった理由がありません。
ハヤタ側は赤い光に気づけそうで気づいていないのも事実ですが、青い光を追っているという状況や、赤い光を認識できるようになったのが衝突直前だったというのが描写から判明しているため、大きな過失があるとは考え難いです。
そこで、ウルトラマンが何か勘違いをしていたために事故が発生したと筆者は思っています。
ウルトラマンはビートルに気づいていなかった?
もしもウルトラマンがビートルに気づいてなければ、ベムラーを追っかけている最中にぶつかるのにも納得がいきます。
ベムラーの姿やら光やらにビートルが隠れてしまい、さながらダンプカーの脇を抜ける車と歩行者との衝突事故のようになったのかもしれません。
これは正直、筆者自身書いていてあまり自然な解釈ではないと思っていますが……。
ビートルの経路を見誤っていた?
あるいは、ビートルが竜ヶ森湖上空に突入すると考えなかった可能性もあります。
科特隊のような怪奇事件の専門家がすでに(偶然)ベムラー追跡劇にかかわっていると考えずにいた可能性や、一般の航空機なら未確認飛行物体相手に近づくようなことをしないと考えた可能性もあります。ただ、ビートルのルートは大きく変化しているように見えないんですよね……。
ウルトラマンは地球の飛行機について知識が乏しかった?
個人的にはウルトラマンが速度やビートルの飛行経路について誤認していたのが衝突の遠因ではないかと考えています。
例えば、ビートルが自由自在に進路を変えられる、あるいは急加速できると考えていた。こう考えていたなら、ウルトラマンが避けられるだろうと考える理由になります。
彼ら自身がUFOらしい非直線的な軌道を取っていましたからね。ビートルもぐいぐい自由自在に軌道を変えられると考えていたのかもしれません。
また、直線的な軌道を取ると把握していたとしても、直前の機首上げを予測できなかった可能性もあります。
どちらも相応以上の速度が出ており、サイズは速度に比して小さいことを考えると、まっすぐ海面すれすれまで行くルートを取っていた場合、ウルトラマンとハヤタが衝突した可能性は低く思えます。
重大インシデントになるようなニアミスが発生して終わったでしょう。
どちらにせよ、ウルトラマンの過失には違いありませんが。
結論:想像以上にウルトラマンに過失がある
さて、いくつか原因を考えてはみましたが、完全にウルトラマンに非があることに変わりはありません。
元々非があることは(ウルトラマンの謝罪なども考えて)大前提なのですが、映像を見返していて、衝突シーンを見た瞬間に記憶していた以上にハヤタ側に回避するすべがないと気が付きました。
まあ、竜ヶ森の位置と衝突経緯に関するいくつかの注目描写について気づけたのには意味があるかなと思い、そのまま記事を書くことにしました。
特に機首上げの可能性については今まで全く気付いていませんでした。
あなたの好きな作品も、見返してみれば何か新しい発見があるかもしれませんよ?
余談:Amazonプライムビデオで見ました
さて、今回の記事を書くために、筆者は本作をAmazonプライムビデオで繰り返し見返しました。
行ったり来たりをするのにちょうどいいんですよね。ディスクメディアと違って読み込みが発生しないので、何度も確認するのがはかどりました。
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