現存しない?『ウルトラQ』『ウルトラマン』『ウルトラセブン』の次回予告を推察

スポンサードリンク

『ウルトラQ』『ウルトラマン』『ウルトラセブン』のビデオ(あるいはDVDなど)をレンタル視聴したことのある方は、本編ラストに予告編が挿入されていない事を疑問に思ったことがありませんか?

筆者も小さな頃に「他のビデオにはあるのに」と思ったことがあります。

いくつかの情報や資料を考察すると、これらの作品の次回予告はほとんど現存していないと考えられます。

今回は第1期ウルトラシリーズの次回予告に迫ってみましょう。

※:試験的に、記事中にAmazon.co.jpアソシエイト他商品リンクを挿入してみました。ご興味があればどうぞ

スポンサードリンク

完全版は一つも見つかっていない!

この現象は『ウルトラマン』に限らず、『ウルトラQ』『ウルトラセブン』にも言えます。

『ウルトラセブン』のVHSビデオ(バンダイビジュアル版)には一部話数の予告編が収録されていましたが、音声が欠落している旨を断るテロップが挿入されていました。

Blu-rayボックスにおいてもおおよそ収録状況は変わらず、『ウルトラQ』『ウルトラマン』には次回予告は無し、『ウルトラセブン』では現存する予告編のみ発掘された音声を合わせて(一部は欠落のまま)収録となっています。

コアなファン向け商品となっているウルトラマンの前夜祭『ウルトラマン誕生』にはウルトラマン第1話の次回予告が収録されていますが、音声はともかく映像に関しては白黒であるため、完全版とはいいがたい状況になります。

結論から言えば、完全版と言える次回予告は残っていないのです。これは特に画質等に問題があるウルトラセブンのBlu-rayBoxにおける断り書きから推察できます。

スポンサードリンク

現存していない理由は制作会社の違いにあり!

現存しない理由を推察する上で重要となるのが、予告編を”どこが”製作したのかです。

結論から言えば、予告編が現存していない3作品はTBSが次回予告を製作したとされています。

円谷がきちんとネガフィルムを保存していた本編に対し、TBSは販売する番組の付属物として扱っていたため保存状況に違いが現れたのでしょう。

スポンサードリンク

なぜ保存されなかったのか?

また、制作背景をみると保存状況に問題が発生した理由が見えてきます。

※:以下の情報は『懐かしのヒーロー ウルトラマン99の謎』P52-53に記述されたものに筆者のつかんだ情報を交えて執筆しています。

同書は大人になって自分でも資料を掘るようになった現在では不正確な記述と思われる部分もありますが、当時の現役特撮ライターによる思い入れの強い文章が読者の心をつかむ良書です。

ウルトラシリーズ第1作となる『ウルトラQ』の予告編は16mmポジフィルムで制作され、ナレーションはTBSアナウンサーなどが持ち回りで担当していました。

まず、16mmのポジフィルムで制作されるというのが不自然です。

通常、予告編は番組の一環として制作・編集されるため、画質や露光補整が行いやすいネガフィルムで行い、放送や公開の段階でポジフィルムに変換するからです。

さらに言えば、『ウルトラQ』は全編35mmフィルムで制作されていました。16mmのポジフィルムというのは、放送用に変換されたものと考えていいでしょう。

また、局アナウンサーが持ち回りで収録するというのも不自然な話です。ウルトラシリーズは90年代まで(特撮シーンが多いなどの理由で)全編アフレコで制作されていたため、アフレコに呼べる声優やナレーターをフィックスすることが可能なはずです。

ウルトラマンの最終話クランクアップは放映10日前というかなりのけつかっちんでしたが、当然ながら(最終回以外も含め)台本はかなり先に上がっているため、ナレーターによる予告編を収録する余裕がないということはあり得ません。

また、先に言及している『ウルトラQ』は全話が放映前に完成していました。わざわざ持ち回りにせず、ある程度の時間をかけて予告編の音声を一アナウンサーで収録するほうが自然です。

また、予告編の制作はTBSが行ったことがわかっています。以上の情報から、予告編制作の状況が見えてきます。

ポジフィルムが用いられたのはすでに準備されている放映用フィルムの焼き増し(当時、テレビ局ではドラマを地方局へセールスするために焼き増しを常用していました)を編集したから。

当時16mmはテレビ用として多用されていたため、局内の編集機材や編集マンは映画用となっていた35mmフィルムよりも扱いやすかったというのは容易に想像できます。

音声がTBSアナウンサーによる持ち回りだったのは放映順が直前まで確定とならなかったから。

これは『ウルトラQ』に限った話ですが、同作はオムニバス形式で制作順と放送順が大きく異なっており、放送直前までどの話を何話にするのかが決まっていませんでした。

先に予告を作った話が後に回され、後に放送されると思って制作していなかった話が来週放送などとなっては困ります。そのため確定となるまでの間にも予告編を作っておかなければなりません。

中には音声収録が間に合わず、ナレーションを一発取りで収録したり、放送時に生でナレーションを行ったりした例もあったようです。

予告編の制作をTBSが行うと決まったのはウルトラQ放映直前だったとされています。

筆者は放送直前になって次々予告編を作っていったため、編集しやすい16mmポジフィルムを用いて編集が完了し次第アナウンサーによるナレーションが収録されたのだと筆者は考えています。

映像は間に合わせるために急いで制作され、音声に至っては残す余裕すらないかつかつの状態だった。

今であれば放送にさえ間に合えばビデオで保存することが可能であり、当時も放送局はビデオ設備を持っていましたが、ビデオテープはあまりに高価だったため、局内で使いまわされていました。

テレビ映像をフィルムに記録するキネコという仕組みもありますが、これは保存用にあえて行うものだったため、予告編を残すためだけに行われることはまずなかったでしょう。

そもそも予告編は、保存可能な状態ですらなかったのです。

スポンサードリンク

『ウルトラマン』『ウルトラセブン』でもかつかつの制作状況

※:復刻版予告編が収録されているのはこちらのBoxとなります。本編のみが収録された廉価版も販売されていますのでご注意ください。

以上の話はウルトラQに限ったものですが、ウルトラセブンまでずっとこの体制は変わらなかったようです。

円谷プロが予告編制作を受け持たなかった理由はよくわかっていません。ウルトラQの際には契約になかったためとされていますが、ウルトラマン、ウルトラセブンの契約時に追加契約を行うことは可能だったはずです。

しかし、それは執り行われなかったようです。少なくともナレーションは前見出しで紹介した『ウルトラQ』の予告編と同じように取って出しで収録されたことが、『ウルトラセブン』Blu-rayBOXの予告編映像からうかがえます。

同映像のナレーションは前後の間が不自然に多いものが散見されます。それこそ、入るタイミングを一瞬見誤ったり、速く読みすぎて尺が多く余っていたり。

少なくとも、何度も収録し直したようには思えません。それでもしっかり読まれているのがさすがプロのアナウンサーだなと思います。

音声収録の環境が取って出しだったのは、おそらく制作状況の影響だと思われます。ウルトラシリーズは制作が遅れがちでした。そのため、自然と予告編が作れるようになるのも遅くなります。

放送に直接携わるスタッフもカツカツの状況下で何とか予告編を制作し、きっちり保存する間もないまま別の作業に取り掛かる必要があったのでしょう。

ウルトラセブンの予告編の中には、本編ではカットされたショットが入っているものが見られます。この点からも完成品を受け取る前に予告編を作り始めなければならない環境だったことがうかがえますね。

制作体制が見直されたウルトラセブンの予告編が現存するもののみとはいえ復刻可能な状態となった点も、きつい制作体制が保存に影響していたことをうかがわせます。

スポンサードリンク

予告編を確認するなら『ウルトラマン前夜祭』がおすすめ

なお、現在視聴上問題の少ない予告編として、ウルトラマンの1話「ウルトラ作戦第1号」予告があります。

これはウルトラマンの前夜祭的特番『ウルトラマン誕生』で放映されたものでした。

円谷プロはウルトラマン誕生の全編をキネコ(先述の通り、テレビをフィルムで記録する手法)で保存していたため、音声画像共に大きな乱れなく残ったのです。

小学校高学年の頃にVHSでレンタルした『ウルトラマン誕生』は、資料的価値を考慮してかキネコされたものが編集されずに収録されており、番組内での生CMはもちろん、枠内で流れたCMまで見られました。

数万円する資料なんかを図書館で読み漁る(そんなマニアックなものを蔵書に入れていた市民図書館には感謝の念が堪えません)ませた子どもだった筆者はすごい資料だと感嘆したのですが、残念ながらBlu-rayBOXではCM部分がカットされていました。生CMに関するくだりまでガッツリカットするのはさすがにやりすぎだと思いましたが、次回予告はきっちり残っているのでご安心ください。

 

いつか散逸した予告編がさらに発掘され、全ての予告編が(一応の形であっても)見られるようになる日が来ることを切に願っています。

 

コメント

タイトルとURLをコピーしました